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「大佐、日ごろの感謝の気持ちです。受け取ってください。」

ピンクと白のストライプで彩られた箱が差し出される。

「人に贈り物をするのは初めてなので、大佐のお気に召すものか分かりませんが。
一応、実際に食べて確かめたので、まずくはないと思います。」 

「ありがとう少尉。だが、私が受け取っていいのか?乙女のチョコは好きな男にやるものだ。」 

セルゲイは、この少女に父親のような気持ちを抱いていた。

任務を遂行しようと、必死になっている姿は、危なっかしく、”自分が守らねば”と思わせる。

「私にはそんなもの、おりませんから。」 

恋も知らない少女の、チョコレート。

受け取ると、軽いはずの箱が、重く感じた。

”ああ、この子が恋をできる世の中にしなくてはな。”

改めて、戦争の終結に向けて、気が引き締まった。




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「刹那、チョコ好きか?」
食堂に入ったと同時に、ロックオンが問うた。

一瞬警戒する様子を見せつつも、刹那が答える。

「・・・好きだ。」

刹那の答えに満足したように微笑み、机の上に載った皿を差し出す。

「じゃあ、これやるよ。」

皿の上には、チョコレートケーキ。

「なぜ、俺に?」

ロックオンと向かい合わせに座り、皿を受け取る。

まっすぐに目を見つめて、問いかける。

「今日は、バレンタインだからな。」

刺さるような視線を受け止め、頬杖をつきながら答えるロックオン。

「バレンタイン?」

常に戦時下で生きてきた刹那には、聞いたことのない単語。首を傾げ、問い返す。

「大切な人に、チョコをあげる日だ。刹那は大切な仲間だからな。ほらよ。」

フォークの柄を、刹那に向けて差し出す。

「そうか。」

目が少しも揺らがなかったのを見、その言葉に偽りがないと判断して、フォークを受け取る刹那。

ケーキの周りの透明なフィルムを剥がし、フォークでケーキの茶色いクリームを掬う。

鼻に近づけて、匂いを確かめ、一口食べて、毒が入っていないか確かめる。

戦場で身に付いた習慣は、なかなか消えない。

「うまい。」

口に入れて暫くしてから、呟いた。

それまでずっと、刹那の食べる様を見つめていたロックオンは、詰めていた息を吐いた。

「・・・そうか。気に入ってもらえて、安心したよ。」

野生動物を手懐けたような満足感を、ロックオンは感じていた。

自然と笑みが浮かぶ。

「ありがとう。」

無表情だが、普段と違う優しい声で、ロックオンに感謝の言葉を述べる刹那。

「ああ。お前も、他の奴にあげるといい。ティエリアとかな。」

”少しは刹那に近づけたかな”と思いつつ、刹那からもこちらへ歩み寄るよう促す。

「わかった。後で買ってくる。チョコでいいんだな?」

最後の一口を飲みこみ、フォークを皿に置く。

「ごちそうさま。」

「お粗末さまでした。・・・ティエリアに似合いそうなチョコ買ってこいよ~。」

「了解した。」


*****



「ロックオン、よかったらもらってください。」 

刹那が出て行ったあと、そのまま食堂でコーヒーを飲んでいたロックオン。

そこへやってきたアレルヤは、赤と金色の紙で包まれた箱を差し出した。

「俺に?サンキュー。」

箱を受け取り、包みを解く。

箱を開けると、金色のホイルに包まれた、チョコレートが現れた。

「どんなチョコが好きか分らなかったので、とりあえずお酒の入ったやつを選んでみたよ。・・・どうかな?」

恐る恐る尋ねるアレルヤ。

チョコを一つ取り出して、ホイルを剥き、一口齧るロックオン。

「美味しいよ。ありがとな、アレルヤ。」

「・・・そう?よかった~。」

胸に手を当て、安堵の溜息を洩らすアレルヤ。

その様子を見て、ロックオンは、アレルヤが自分にチョコをくれた理由に思い至った。

「どうやら、考えることは一緒みたいだな。」

「え?」

「俺も、刹那にさっきチョコあげたんだよ。やっぱ命預けあう仲間同士だからさー、もう少し歩み寄った方がいいよな?」

「・・・そうだね。」

アレルヤがチョコレートをあげた理由は、ロックオンとは違うけれど、喜んでいるのだから、あえて否定しないでおいた。




*****




ロックオンと少し話した後、食堂から出て、アレルヤは部屋へ戻る通路を歩いていた。

そこへ、買出しから帰ってきたティエリアが現れた。

「あ、お帰りなさい。」

ロックオンの喜んだ顔を思い浮かべていたので、いつもより気安く話しかけた。

食材の入った茶色い紙袋を両手に抱えたティエリアは、それに応えず、ちらりとアレルヤの顔を見ると、紙袋の中から、銀色の包装紙に紺色のリボンが結びつけられた箱を取り出した。

「これでも食べて、少しはガンダムマイスターに相応しい働きをするんだな。」 

眼鏡の奥の瞳は、相変わらず厳しい光を放っている。

けれど、普段より幾分声音が柔らかい。

「・・・うん。頑張るよ。ありがとう、ティエリア。」

両手で受け取ると、すぐにティエリアは自室へ向けて歩き出した。




*****




ティエリアが、自室で買ってきたものを袋から出していると、扉が叩かれた。

「ティエリア。いるか?」

刹那だ。

「・・・なにか用か?」

手を休めることなく、問いかける。

「ああ。チョコを持ってきた。」

扉の向こうから、答えが返ってくる。

その言葉に、手を止め、ティエリアは扉を開けた。

刹那が立っている。

「甘くないチョコだ。」

光沢を放つ黒い箱。

「なぜ私に?」

箱に目を落したまま、問う。

「今日は、バレンタインという日なんだろ? ロックオンから聞いた。 仲間にチョコを渡す日だと。」

答えはすぐに返ってきた。

箱を受け取る。

蓋を留めていた金色のシールを剥がすと、正方形の薄くて小さな板チョコが6つに区切られたケースに2枚ずつ重ねて入っていた。

「・・・・・・」

「もしかして、嫌いか?」

反応のないティエリアを見上げる刹那。

「いや・・・嫌いではない。」

「ならよかった。では、次のミッションで。」

踵を返し、歩き出す刹那。

「あ、おいっ!」

その背中に呼びかけるティエリア。

振り返る刹那。

「なんだ?」

「あ、ありがとう。」

言い慣れない言葉。ぎこちない。

「ああ。」

短く頷き、また歩き出す刹那。

その背中を見ながら、1枚チョコを取り出し、口に入れる。

「・・・苦い。」




--- end ---

彼らが貰うor作りそうなもの。

ロックオンはウイスキー・ボンボン
刹那はチョコケーキ
アレルヤはトリュフ
ティエリアはビターの板チョコ

グラハムはゴディバ(ベルギー)
カタギリはギリアンのシェルチョコ
沙慈は生チョコ
ルイスは手作りチョコマフィン

コーラサワーは、ナッツチョコ(ロシェ)

セルゲイは、イチゴチョコ

というイメージをもとに書きます。

今日中にUPできるかな~。
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